がんに対するアルテスネイト点滴療法のお知らせ
【アルテミシニンについて】
中国では古くから青蒿(せいこう)というキク科ヨモギ属の植物が、解熱剤などとして用いられてきました。青蒿から分離されたアルテミシニンとその誘導体アルテスネイトは、現在マラリアの治療薬として世界中で使用されています。そして近年、アルテミシニンに抗がん作用があることが多くの研究で明らかにされてきました。
【アルテスネイトの抗がん効果】
アルテスネイトはさまざまながん細胞に対して抗腫瘍効果を示すことが報告されています。
動物実験では、白血病、乳がん、肺がん、胃がん、肝臓がん、胆管がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、 骨髄腫、膵臓がん、大腸がん、脳腫瘍、前立腺がん、咽頭扁平上皮がん、口腔扁平上皮がん、悪性黒色腫などに対する抗腫瘍作用が報告されています。
臨床例での有効性を認めた症例報告も多くあり、エビデンスが蓄積つつあります。
【アルテスネイト 抗がん作用のしくみ】
がん細胞は健康な細胞と比べて体内の鉄(特に2価鉄:Fe²)を大量に取り込みます。アルラジカル種を産生するエンドペロキシド群が含まれており、アルテスネイト点滴を行うとこれらが鉄に反応してヒドロキシラジカル(OH)などの活性酸素(ROS)を発生します。がん細胞は、活性酸素に大変弱い為に、障害を受けて消滅、細胞死(アポトーシス)や細胞崩壊(フェロトーシス)に導きます。
※抗がん剤との併用治療も可能で、治療日(翌週 又数日空けて) を変えて行なっています。

【副作用について】
抗腫瘍作用を示す投与量では正常細胞に対する毒性が比較的低く、副作用が少ないと期待されています。
アルテスネイトは昔からマラリアの治療に使われていた生薬の成分で、安全性が高く副作用が軽度であるとの報告があります。
ただし、がん治療における使用は標準治療として確立されていないため、患者様には個別にリスクや効果について十分に説明を行い、ご理解と同意をいただいたうえで治療を実施いたします。
<主な副作用>
消化器系症状
・吐き気、嘔吐
・下痢
・腹痛
肝機能障害
肝酵素(AST, ALT, ALP, ビリルビン)の上昇
神経毒性
・一部の研究では脳幹神経毒性(高用量または長期使用時)
・頭痛、めまい、ふらつき
アレルギー反応
・皮膚発疹、かゆみ
・アナフィラキシーの可能性(非常に稀)
心血管系への影響
・心電図異常(QT延長)
・低血圧(急速静注の場合)
【注意】
アルテミシニン誘導体は、国内で医薬品医療機器等法に基づく承認を受けていない未承認医薬品です。また、がん治療において標準治療として確立されたものではありません。
【入手経路と安全性】
アルテミシニン誘導体は、信頼性の高い供給元を通じて適切に入手しています。治療に使用する薬剤は、品質管理が徹底されたものを用いております。
また、安全性については、抗マラリア薬として世界中で広く使用されている実績があり、国際的なデータに基づいて確認されています。
ただし、がん治療における長期的な安全性や有効性については、十分なエビデンスが確立されていない点をご理解ください。
【アルテスネイト製剤の品質保証】
・WHO(世界保健機関)に認証されて、管理されている世界的な薬剤です。
・製造承認:2002年12月 GMP合格 (GMP:Good Manufacturing Practice) 医薬品の製造品質基準、各国がこれに準じて基準を設定している。
・2005年11月 WHO-PQR 認証取得 WHO(世界保健機関) 認証済み医薬品登録です。
・PQR :WHOが管理する国連プログラムで、唯一のグローバル医薬品品質保証プログラムです。
【がんにおけるアルテミシニンの使用に関連する研究】
・「非小細胞肺癌(NSCLC)患者におけるアルテスネイトの影響」
中国のDongguanKuanghua Hospitalの研究者が行った研究では、アルテスネイト(アルテミシニンの誘導体)とNP(ビノレルビンとシスプラチンの化学療法レジメン) およびNP単独の120例の治療における有効性と毒性を比較しました。対象は進行した非小細胞肺癌細患者(NSCLC)。
(Zhu-Yi Zhang et al、Zhong Xi Yi Jie He Xue Bao。、2008)
(要約)NP化学療法レジメンのみを受けた患者と比較して、アルテスネイトとNP化学療法を併用した患者では、短期生存率が34.5%から45.1%にわずかに増加し、 平均生存期間が45週間から44週間にわずかに減少しました。
1年生存率が32.7%から45.1%にわずかに増加しました。
この研究では、アルテミシニンと化学療法レジメンの両方を受けた患者の疾病管理率は88.2%であり、化学療法のみを受けた患者よりもわずかに高い72.7%であることがわかりました。
この研究では、XNUMXつのグループ間で毒性(骨髄抑制と消化反応)に有意差は見られませんでした。
全体として、この研究では、アルテスネートと化学療法の組み合わせで治療された患者は、化学療法と一緒にアルテスネイトを投与されなかった患者よりも癌の進行が遅いため、 アルテスネイトがNSCLCの治療に有益である可能性があることがわかりました。
【治療費用】
1クール(30本)の場合 900,000円(税込)
※別途診察費用がかかります。
