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ブログ

口腔ケアは「がん治療の一部」 〜 Agri-Dent-Medicine™から見る「がん治療における口腔ケア」 〜

<がん治療は、身体の「土」を整えるところから始まる>

がん治療というと、多くの人は抗がん剤や放射線など「腫瘍を攻める医療」を思い浮かべます。
けれども、植物が健やかに実をつけるには、土が整っていなければならないように、人間の体もまた「内なる土壌」が健全であってこそ、治療の力が発揮されます。

この「内なる土壌」――それが口腔内環境と腸内環境、特にそこに住む微生物叢という「土壌」です。
私たちはこの考えを、「農・歯・医の連携(Agri-Dent-Medicine™)」という新しい医療概念として提唱しています。


<口は「命の入口」であり、「腸への玄関口」>

口腔は、食物・水・微生物・空気が最初に出会う場です。
ここで生まれる炎症や菌のバランスの乱れは、腸内フローラへと直結し、全身の免疫や代謝、さらにはがんの進行や再発リスクにも影響を与えます。

実際、近年の研究ではがん患者の約40~50%が口腔内トラブル(口内炎・感染・乾燥など)を経験しており、口腔ケアを行うことで抗がん剤治療の中断率や感染症発生率が下がることが明らかになっています。
(Int J Environ Res Public Health, 2023; J Clin Med, 2024)

つまり、「口を整えること」は治療の副作用対策ではなく、「治療の一部」なのです。

当院では、アルコールを含まず口腔内細菌叢に優しい洗口液と水素NanoGAS水(腸内フローラ移植にも用いられる還元力の高い水)を使ったセルフケアを推奨することで口腔内トラブルに対処しています。


<「農」が示すヒント:土を耕し、微生物と共に生きる>

Agri-Dent-Medicine™では、農学の原理を医療と歯科に応用します。
農業では、化学肥料や農薬だけに頼るのではなく、土壌微生物の多様性を守りながら「生態系の回復力」を高めることが持続可能な栽培の鍵とされています。

人体も同じです。
抗がん剤という「強い介入」を支えるために、その土台である口腔や腸の微生物叢を整え、炎症を鎮め、免疫を調律する――これこそが、「医療の土壌改良」とも言えるアプローチです。

実際に乱れた腸内環境を予め腸内フローラ移植(便移植:FMT)で改善しておくことで、抗がん剤の効果を高めることがわかっています。(Nature, Outlook, 04 July 2024)


< 微生物循環を支える医科歯科連携の新しいかたち>

当院では、内科・歯科・栄養・農学的思考を融合させ、がん治療中の方へ以下のような統合ケアを提供しています。

  • ・がん治療中の専門的口腔ケア:粘膜炎や感染症を防ぎ、治療継続を支援(口腔内環境の最適化)

  • ・腸内環境の評価と改善(FMT・分子栄養):免疫・代謝・炎症の調整(栄養の最適化、腸内環境の最適化)

  • ・食と農をつなぐ食養サポート:微生物多様性を育む発酵食材の提案(微生物循環を考慮した食材)、農業関連ワークショップの開催

  • ・心身統合プログラム:ストレス反応と腸脳相関へのアプローチ(各種ホリスティックセラピー)
  •  

これらはすべて、「治療」と「回復」の循環を取り戻すための医療です。口を整え、腸を整え、心を整える――その三つの循環が揃ったとき、人は微生物のリズムと共鳴し本来の生命力を発揮し始めます。


< 「治す」から、「育む」医療へ>

がん医療の本質は、「腫瘍を取り除くこと」だけではありません。むしろ、体と心の再生力を育むプロセスにあります。

口腔ケアはその入口。

がん治療中のケアを通して、患者さん自身が「自分の体を信じ、微生物と共に生きる」感覚を取り戻す。

口を整えることは、腸を耕すこと。

腸を整えることは、生命の循環を育むこと。

それがAgri-Dent-Medicine™が目指す医療の形です。


<参考文献>
MASCC/ISOO Clinical Practice Guidelines for Mucositis Management, Support Care Cancer, 2020.
Romano et al., Int J Environ Res Public Health, 2023; 20(14):6412.
Watanabe S et al., J Clin Med, 2024; 13(19):5723.
Nature、Outlook, Faecal transplants can treat some cancers ― but probably won’t ever be widely used, 04 July 2024
Riley P et al., Cochrane Database Syst Rev, 2017;(11):CD011973.
桐村里紗『腸と地球の微生物循環』(2023, アノニマ・スタジオ)