当院におけるサイモントン療法の位置づけ
20代で潰瘍性大腸炎(UC)を発症し、30代で重症化し大腸全摘した医師として
当院では、さまざまな症状や背景を持つ患者様に治療を提供していますが、どの治療においても変わらず大切にしている姿勢があります。
それは、
「まずは患者様に寄り添い、痛みや苦しみを和らげること」
そして同時に、
「なぜこの方は病気になったのか」
という問いを常に胸に置きながら治療を進めることです。
・HOW(どのように病気になったのか)に向き合う、生物学的アプローチ
「なぜ病気になったのか」という問いに対して、
まず欠かせないのは生物学的・科学的な視点です。
腸内環境、栄養状態、ホルモン、免疫、遺伝素因、生活習慣、ストレスなど…病気の発症には必ず「プロセス(HOW)」があります。
それを丁寧に分析し、必要に応じて修正し、症状の根本にアプローチしていく。これは医学の基本であり、当院の治療の中心となる部分です。
しかし――
時に HOWの説明だけでは、患者様の苦しみが軽くならないことがあります。
・WHY(なぜ自分が病気になったのか)という、もう一つの問い
長引く症状、繰り返す再燃、生活の制限。身に起こった現実を受け止めきれないとき、人はふと、
「なぜ自分が病気になったのか?」
「どうして自分だけが、こんな経験をしなければならなかったのか?」
という“WHY”の問いに向き合うことがあります。
これは医学的な HOW の説明だけでは埋まらない領域であり、いわゆる スピリチュアルペイン と呼ばれるものでもあります。
この問いに向き合うには、その人の生い立ち、価値観、信念、時に死生観に踏み込む必要があります。これは従来の医学が苦手としてきた部分です。
・私自身も、WHYの問いに向き合った一人
<潰瘍性大腸炎と大腸全摘の経験>
実は私自身も、20代で潰瘍性大腸炎を発症し、再燃を繰り返した後、30代で重症化し大腸全摘に至りました。
当時は医師として働きながらも、
「この先、医師を続けられるのだろうか」
「人生はどうなるのか」
「こんな私が医師としての資格があるのか」
という不安と喪失感の中にいました。
身体的な苦痛だけでなく、“WHY の問い”が深く胸に突き刺さった時期でした。
- 「なぜ自分が病気になったのか」
- 「何のために、この経験をする必要があったのか」
- 「自分の人生は何を選ぶべきなのか」
その問いに向き合った経験が、サイモントン療法と出会っていたことで、まさに「求めていた答え」に辿りついたのです。
この体験こそが、患者様のHOWとWHYの両方に寄り添う医療を提供したいという現在の私の医療観の根底にあります。
・カール・サイモントン博士との出会いが、医療観を一変させた
私は2005年に、サイモントン博士の著書『ガンのセルフ・コントロール』(創元社)と出会いました。
翌2006年、実際に博士にお会いする機会を得ました。その後も、博士のもとで学び続ける中で、「病気をどう捉え、どう向き合うのか」という視点が大きく変わりました。
・サイモントン療法とは?
サイモントン療法は、米国の放射線腫瘍医 O. Carl Simonton, M.D. によって開発された、がん患者さんと家族のための心理療法です。
サイモントン療法の基本的な理念として「私たちは本来健康な存在である」「病は私たちが本性に近づくためのメッセンジャーである」などがあります。
現在では、日本の認定機関において、がんに限らず、ストレス起因のさまざまな症状にも応用されています。
博士はがん治療の最前線で、希望を持つ患者さんと絶望感に沈んだ患者さんの間に、“その後の経過に大きな違い”があることに気がつきました。
その後の研究で、感情・心理状態が免疫機能に深く影響することが次々と示されています。(心身医学、精神神経免疫学、精神腫瘍学など)
しかし、標準的な医療現場では、こうしたアプローチを体系的に取り入れている施設は多くありません。
身体・心・魂のバランスを取り戻すための医療
サイモントン療法は、単なる「メンタルケア」ではありません。病状が改善するだけでなく、「身体・心・魂(スピリット)」のすべてが健全な状態へ戻っていくプロセスをサポートします。
つまり、「病気が治る」だけではなく「生き方が変わる」
そんな変化をもたらす可能性を持つアプローチです。
当院におけるサイモントン療法の位置づけ
当院は サイモントン療法協会の認定機関として、サイモントン療法の哲学と実践を診療の大切な柱としています。
- 生物学的に原因を探る HOW の医療
- 人生・価値観に向き合う WHY の医療
この両方を重ね合わせ、患者様が本来のバランスを取り戻し、身体だけでなく、人生が豊かになる医療を目指しています。
「患者様とともに歩む医療」それが私たちの変わらない姿勢です。
サイモントン療法について詳しくはこちら:
https://simontonjapan.com/
※写真は2009年、サンタバーバラにてサイモントン博士と。
11月8日に名古屋で行われた日本先制臨床医学会にて
真ん中はサイモントン療法が受けられる船戸クリニック院長船戸崇史先生、右は日本人初のサイモントン療法セラピストでありサイモントン療法協会の代表理事・川畑のぶこさん

この学会では川畑のぶこさんがサイモントン療法について講演をしました。
