腸内フローラ移植(FMT)とがん治療 〜 腸から「治る力」を底上げするという発想 〜
2025.10.20
<がん治療は「叩く」だけの時代から、「あなた自身の免疫を整え、引き出す」時代へ>
腸は免疫の要で、腸内細菌(腸内フローラ)の質と多様性は、免疫療法や抗がん剤の効き方にまで影響することが分かってきました。特に、免疫チェックポイント阻害薬(PD-1/PD-L1)では、腸内環境が良いほど反応が良い傾向が報告されています。Science+2Science+2
<FMTとは?――「腸の土壌」の微生物多様性を増やし整える治療>
「FMT(腸内フローラ移植)」は、健康な提供者の腸内細菌を用いて、乱れた腸内環境を改善させる医療です。https://www.lukesashiya.com/intestinal_flora/
がん治療中は薬剤や抗生物質で腸内フローラが乱れ多様性が低下する傾向にあります。そこでFMTで多様性を回復させると、免疫の働きが整い、治療に再び反応しうることが、皮膚がん(進行メラノーマ)を中心に臨床研究で示されています。Science+2Science+2
<がん種別:どこまで分かっている?>
- #皮膚がん(進行メラノーマ)
PD-1阻害薬が効かなくなった患者さんにFMT+PD-1阻害薬を再投与した臨床試験で、一部の方に再び反応(部分奏効~完全奏効)が見られました。安全性は概ね許容範囲で、ドナーの菌が定着し、腫瘍内の免疫環境も“反応型”に変化したことが示されています。Science+2PubMed+2
#消化器がんなどの固形がん
PD-1抵抗性の固形がんで、FMT+PD-1を組み合わせると奏効率が改善する可能性を示した多施設臨床試験が報告され、特に消化器系で有望という所見もあります(研究段階)。Cell+2PubMed+2
#抗がん剤(化学療法)そのものとの関係
ヒトではエビデンスがまだ少なめですが、腸内細菌がシクロホスファミドやオキサリプラチン等の「効き目」と「副作用」を左右することが動物実験や総説で一貫して示されています。腸内フローラを良好に保つことは、化学療法の効果最適化にも理にかないます。PubMed+1
#抗生物質の使い方に注意
免疫療法中の広域抗生物質の投与は成績を悪化させうるという解析が相次いでいます。感染治療はもちろん必要ですが、不要な抗生物質は避ける――これも「腸を守る」大切な視点です。jtocrr.org+4Science+4darmzentrum-bern.ch+4
<どうして腸で治療効果が変わるのか?>
腸内細菌は、短鎖脂肪酸や代謝物をつくり、T細胞や樹状細胞など免疫の司令塔に働きかけます。FMTで「良い菌相」に寄せると、腫瘍内への免疫細胞浸潤が増え、炎症バランスが整い、免疫療法への再感作(リセンサタイゼーション)が起こりうると考えられています。Nature
<当院の考え方(安全・倫理を最優先)>
- 抗生物質や腸洗浄に頼らないやさしいFMT手法(NanoGAS®水など)を採用し、ドナー管理・感染対策・倫理審査を徹底します。分子栄養学(食物繊維・発酵食品・ビタミンD・亜鉛など)を組み合わせ、“腸―免疫―代謝”の三位一体で治療を支えます。抗生物質の適正使用、プロトンポンプ阻害薬や下剤など腸内フローラへ影響する薬剤の見直しも、主治医と連携して進めます。癌研究の年報
FMTにご関心がおありの方はお気軽にお問い合わせください。

