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腸内フローラ移植(FMT)の歴史と現在

 FMTがなぜ今、世界中で注目されているのか?  当院の取り組みとともに解説します 

「腸内フローラ移植(糞便微生物叢移植、便移植、FMT)」という治療をご存じでしょうか。
近年テレビやメディアで紹介されることも増え、「気になる治療」として来院される方が増えています。

しかし、FMTは決して「新しい流行の治療」ではありません。実は 何千年も前から、人類が経験と知恵で行ってきた方法でもあるのです。

今日は、FMTの歴史を振り返りつつ、現在の医学がどこまで進み、当院ではどのように活用しているのかを分かりやすくまとめました。

1. FMTの歴史 ― 実は「最も古い救命治療」のひとつ

● 起源は約1700年前、中国の古典医学

中国の医学書『肘後備急方』(4世紀)には、重篤な食中毒や下痢に対して「黄龍湯」と呼ばれる便ベースの治療を用いたという記述があります。

当時すでに、「健康な人の便には病を治す力がある」という経験則が存在していたわけです。

● 20世紀:欧米で再び注目される

1940~1950年代、抗生物質の発展とともにクロストリジオイデス・ディフィシル感染症(C. difficile)(CDI)が問題化しました。通常治療で治らない患者に対し、「健康な便を投与することで劇的に改善した」という報告が相次ぎ、FMT研究が加速。

● 2010年代:科学的根拠が一気に拡大

  •  腸内細菌のDNA解析が進化
  •  16S rRNA解析・メタゲノム解析の普及
  •  マイクロバイオーム研究の爆発的進歩
     2013年にオランダのチームがCDIに対してFMTが90%近い効果を示したことを発表し世界的に注目される。

これらにより、FMTは エビデンス(科学的根拠)を持った医療として世界的に認知されるようになりました。

そして現在、「生の便を使う時代 → 精製菌体を用いたマイクロバイオーム製剤の時代」へと進化しています。

2. 現在のFMTは何に効く?世界の評価は?

  1. ①確立している領域

● 再発性C. difficile腸炎(rCDI)

欧米ではすでに 「標準治療」と位置づけられています。近年は Rebyota® や Vowst™ といった 腸内細菌製剤が薬として承認 される時代に入りました。

②有望だが研究段階の領域

● 潰瘍性大腸炎(UC)

  • 多回数・多ドナーFMTで改善した臨床試験が多数。ただし誰に効きやすいかはまだ研究中。海外ガイドラインでは「標準治療に追加する選択肢」として位置づけ

● IBS / SIBO・慢性便秘

改善例が多い一方、反応が乏しい方もおり個人差が大きいのが特徴。

● ASD(自閉スペクトラム症)

腸–脳相関の研究とともに発展中。腸の症状改善とともに行動・睡眠の変化が見られたというデータもあり、世界的に注目されています。

③ 研究が始まったばかりの領域

  • 肝疾患(NASH、肝性脳症)
  • 自己免疫疾患
  • パーキンソン病
  • うつ病
  • がん治療の副作用

腸内細菌の影響の広さを示す領域ですが、まだ臨床応用はこれからです。

3. FMTの安全性 ― 「どれだけ厳密に管理しているか」で決まります

FMTは有望な治療ですが、安全性の確保は100%準備と管理で決まります。

  • ・ドナーの感染症スクリーニング
    ・ドナーの便の病原菌のチェック
  • ・菌体加工・保存の衛生基準
  • ・使用前の最終チェック

これらが不十分なFMTは、感染リスク・多剤耐性菌の伝播など、危険性が高まります。

当院では、日本初の腸内フローラバンク・Japanbiomeにおいて国際基準に基づくスクリーニングと加工プロセスを用い、安全性と再現性」を最優先した菌液を使用したFMT を提供しています。

4. 当院のFMTの特徴

―「入れる」だけでなく、「定着」を徹底的に考えるFMT

FMTは、「菌を入れる治療」ではなく「腸で育ててもらう治療」です。当院のFMTは、この「定着」を最重要視し、以下の独自性を持っています。従来のFMTでは事前に抗菌薬を用いて腸内細菌を減らしますが、当院では抗菌薬は使用しません。
また、従来のFMTでは下剤で腸管洗浄を行い、内視鏡を使ってFMTを行いますが、当院ではいずれも使用せず細くて柔らかいチューブを使い肛門から10〜15cm挿入してFMTを行います。

① 詳細な事前評価で「原因」を特定する

腸内環境はミトコンドリア代謝、口腔細菌、ホルモンバランス、ストレス・自律神経、食生活などの影響を受けています。

当院では、

  • 腸内フローラ解析
  • OAT(尿中有機酸)
  • 血液・ホルモンバランスチェック
  • 口腔内環境チェック(医科歯科連携)
  • 重金属蓄積チェック

を統合して、腸が乱れた「根本原因」を特定します。FMTの前にこれらにアプローチすることによりFMT後の生着率が大きく変わります。

② 水素NanoGAS®水による「腸の下準備」

移植細菌の定着を妨げる

  • 酸化ストレス
  • 悪玉菌のバイオフィルム
  • 粘膜環境の乱れ

これらを整えるため、当院では抗酸化作用の強い高濃度水素ナノバブル水(NanoGAS®) を活用しています。これは世界的な microbiome engineering の流れとも一致し、「移植前に腸を整える」という次世代FMTの発想です。

③ 医科 × 歯科の統合アプローチ

腸内細菌と口腔内細菌は深く関連しています。口腔環境の乱れは腸内フローラの生着を妨げる大きな要因です。

当院では

  • 内科医(消化器内科・心療内科)
  • 歯科医師(矯正・口腔機能)
    が同じ空間で連携し、口腔–腸–全身の「微生物循環」をトータルに整える日本でも珍しい医科歯科一体型モデルを採用しています。

④ FMT後の生活・栄養サポートまで伴走

FMTは「その後の生活」で成否が決まります。

  • 食事(基本は和食と十分な水分)
  • 睡眠
  • 運動
  • ストレスマネジメント

これらを整えることで移植した菌が「自分の菌」として根づきます。当院のスタッフが、患者さんに合わせたプランでサポートします。

5. 最後に ― FMTは「未来の医療」の入り口です

腸内細菌はまだ解明されていない領域が多く残っています。しかし近年の研究スピードは驚異的で、腸を整えることで

  • 免疫
  • 代謝
  • 神経
  • 精神
  • アレルギー
  • 代謝疾患

など、身体のあらゆる機能が再構築される可能性が示されています。

FMTは魔法ではありませんが、正しく行えば、人生の質(QOL)を大きく変える力を持った治療です。

当院では、歴史に裏打ちされた知恵と最新の科学を組み合わせ、安全性と倫理性を何より大切にしながら、「患者さんに最適なFMT」を一緒に作っていきたいと考えています。