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腸内環境の「臨界点」と難治性の不調について考える――研究が進む選択肢の一つ、FMTとは

【冒頭のご注意】
本記事は、腸内細菌叢に関する現在知られている理論的な知見と、研究段階にある治療法に関する情報提供を目的としています。特定の治療法や医療機関を推奨するものではありません。個人の症状や治療方針については、必ず専門の医師にご相談ください。

「体に良いと言われる発酵食品を食べているのに、お腹が張って苦しい」
「食物繊維を意識しても、便通が改善しないどころか悪化している気がする」
「様々なサプリメントや食事療法を試したが、長年お腹の不調が続いている」

もし、あなたがこのような状態で悩んでいるのなら、それは決して努力が足りないからではありません。もしかすると、あなたの腸内環境で起きている問題は、一般的な「腸活」の前提が通用しない段階にあるのかもしれません。

この記事では、腸内環境が持つ複雑な性質と、なぜ不調が長引いてしまうのかというメカニズムを、最新の生態学的な視点から紐解いていきます。そして、従来の治療法で行き詰まった際の、新たな研究領域のアプローチについても触れてみたいと思います。



健康な腸には「元に戻る力」がある
〜ロバストネス(堅牢性)という考え方〜

私たちの腸内には、多種多様な細菌が住み着き、まるで一つの巨大な森林のような複雑な生態系を作っています。

健康な状態の腸内生態系は、多少のストレス(暴飲暴食、一時的な体調不良、短期的な薬の服用など)があっても、しばらくすると自力で元の良いバランスに戻ろうとする力を持っています。

システム生物学や生態学では、このように外部からの攪乱(かくらん)に対してシステムが機能を維持しようとする性質を「ロバストネス(Robustness:堅牢性、頑健性)」と呼びます。

【図解イメージ】不安定な「未病」の時こそ必要なセルフケア

これを視覚的にイメージしてみましょう。健康な腸内環境は、「深い谷底に安定して収まっているボール」のようなものです。

  • ボールの位置:現在の腸内環境の状態(谷底=健康)
  • 外部からのストレス:ボールを横から押して斜面を登らせようとする力
  • ロバストネスが高い状態:谷が深いため、少々押されても、手を離せば重力でボールはすぐに元の谷底(健康な状態)に戻ります。

    不安定な未病の状態では、その時の環境次第で健康に戻れたり、あるいは病気への移行しやすい状態です。
    一度病気にまでなってしまうとロバストネスは高く(安定している)、元に戻るには相当なエネルギーを要することが図からもお分かりいただけると思います。
©Dr. Masa@BioWellness All rights reserved


「臨界点」を超えて、ロバストネスが失われる時

しかし、この「元に戻る力(ロバストネス)」も無限ではありません。

長期間にわたる偏った食生活、慢性的な強いストレス、抗生物質の頻繁な使用などが続くと、腸内環境の多様性は徐々に失われていきます。これは、ボールが収まっている「谷」が、だんだんと土砂で埋まり、浅くなっていくようなイメージです。

谷が浅くなると、元の場所に戻る力は弱まります。そして、ある一線――「臨界点(ティッピング・ポイント)」――を超えた瞬間、ボールは峠を越えて、隣にある「別の谷(不健康な状態)」へと転がり落ちてしまいます。

©Dr. Masa@BioWellness All rights reserved

生態学ではこれを「レジームシフト」と呼びます。一度この「悪い谷」に落ちてしまうと、今度はその悪い状態でシステムが安定してしまいます(ディスバイオシスの定着)。こうなると、自力で元の深い谷に戻ることは極めて困難になります。



なぜ、これまでの「腸活」が効かないのか?

「臨界点」を超えてロバストネスが失われた腸内は、非常に脆弱な状態です。

これまでの腸活は、豊かな森に肥料をやるような行為でした。森が元気なら、それはとても有効です。しかし、生態系のバランスが崩壊し、荒れ果ててしまった土地では、同じ方法が通用しません。

例えば、健康な人には有益な特定の食物繊維(FODMAPなど)が、バランスを崩した腸内では特定の菌によって異常発酵を起こし、激しいガスや腹痛の原因となってしまうことがあります。これが、「良かれと思った腸活が逆効果になる」一因と考えられています。

この段階に至ると、一般的な食事療法や整腸剤だけでは症状のコントロールが難しく、治療が長期化・難渋するケースが少なくありません。




研究が進む新たなアプローチの一つ:FMT(便移植)とは

崩れてしまった生態系を立て直すために、全く異なる視点からのアプローチとして研究が進められているのが、FMT(Fecal Microbiota Transplantation:糞便微生物移植)です。

これは、健康なドナーの便に含まれる腸内細菌叢のコミュニティ全体を、内視鏡などを用いて患者さんの腸内に移植するという手法です。

特定の菌をサプリメントで補うのではなく、崩壊してしまった「生態系(土壌)そのもの」を、健康な状態のもので丸ごと再構築しようという、大胆な発想に基づいた試みです。

当院では従来のFMTとは違い、抗生剤を使わず、腸洗浄も行わない新しいFMTを取り入れています。

 

FMTの現在地:可能性と、知っておくべき現実

FMTは非常にユニークなアプローチであり、世界中で活発に研究が行われています。特定の難治性感染症(再発性C. difficile感染症)に対しては、すでに海外で極めて高い有効性が認められ、標準治療になりつつあります。

しかし、一般的には過敏性腸症候群(IBS)や潰瘍性大腸炎(UC)などの慢性疾患に対しては、まだ研究途上にある治療法であることを理解しておく必要があります。(当院では新規FMTによりこれらの疾患に対して治療を行い改善を認めた症例が増えています。)

【冷静な理解のために重要なこと】
  • 万能ではありません:効果には個人差が非常に大きく、劇的に改善する例もあれば、残念ながら効果が見られない例も報告されています。疾患の種類や、患者さん自身の腸の状態によっても結果は異なります。
  • 多くはまだ研究段階です:日本においては、現時点では主に大学病院などで、倫理委員会の承認を得た上での「臨床研究」として慎重に実施されているケースがほとんどです(当院では自由診療で行なっております)。
  • リスクもあります:他者の生体試料を体に入れるため、未知の感染症リスクなどが完全にゼロではありません。厳格なドナー管理と医療体制が不可欠です。


まとめ:焦らず、専門家と共に自分に合った道を探す

長年の不調は心身を疲弊させ、「何でもいいから治したい」という気持ちにさせます。しかし、私たちの腸内環境は想像以上に複雑であり、単純な解決策は存在しません。

FMTは、従来の治療で壁にぶつかっている場合の「将来的な選択肢の一つ」として、現在研究が進められているアプローチです。

大切なのは、ご自身の腸の状態が今どのような段階にあるのかを客観的に捉えることです。自己流の対策を続ける前に、消化器内科の専門医や、腸内環境の専門的な知識を持つ医療機関とよく相談し、現状で可能な最善の治療方針を一緒に探していくことが第一歩となります。

ご関心がおありでしたらお気軽にご相談ください。

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