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「特殊菌液」を用いた腸内フローラ移植の有用性

2018年6月 5日

先週末は淡路島で開かれた「日本先制臨床医学会」の第1回学術大会に参加していました。

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ここで私たちの行なっている特殊菌液を用いた腸内フローラ移植(糞便細菌叢移植)についての発表を行いましたので、その内容を少しだけ紹介しておきます。

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現在大学病院を中心として糞便細菌叢移植(便移植)は行われていますが、クロストリジウムディフィシル感染症以外の疾患に対する効果は「限定的」と考えられて来ました。

たとえば潰瘍性大腸炎に対する便移植の効果に関しての報告は1989年の症例報告が最初で、以後小規模の症例報告がいくつかありましたがいずれもエビデンスレベル(どのくらい信ぴょう性のある結果か?)は決して高いものではありませんでした。

2015年になって初めて二重盲検試験(RCT)と呼ばれるエビデンスレベルが最も高いとされる方法で潰瘍性大腸炎に対して行なった便移植の結果が報告され、その効果は24%と決して高いものではありませんでした。

その後他のRCT報告では有意差を認めず、また2017年にThe Lancetに掲載されたRCTでは27%という結果でした。

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つまり2017年時点で、便移植の潰瘍性大腸炎に対する効果はまだ確定していないと言えます。

そこで今回私たちが特殊菌液を用いて行なっている便移植での効果を見るために、2016年以降に特殊菌液による便移植を行なった潰瘍性大腸炎の経過を調査し直し評価したところ、66.7%の症例で効果があったという結果になりました。

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(FMT:Paramothyら、Lancet, 2017、 UB-FMT:特殊菌液を用いた腸内フローラ移植

この調査方法はRCTではなく、過去に行われた移植症例の経過を見直すという方法で行われたもので、決してエビデンスレベルは高くはないものの、2/3の症例に効果があったというのは今までの常識を覆す可能性のある数字で、2017年のRCTによる報告との比較では有意差もあることが確認できました。

私たちの調査がRCTではないので単純に比較することは適切ではありませんが、これだけ大きな差が出たということは、治療の選択肢として位置付けることができるであろうと考えられます。

これだけの数字が出た背景には、先ほどから書いている「特殊菌液」にあります。

通常の便移植の際は、多くの場合「生理食塩水」を使い移植する菌液を調整します。

しかし私たちの行なっている便移植では、単なる生理食塩水ではなく、特殊な菌液を使っています。

残念ながら現在特許申請中ということもありまだ全容を公表できないのですが、医療の分野でも以前より使われている技術に少し工夫を加えたもので、その安全性は担保されています。

この特殊菌液を便移植に用いることでドナーの腸内細菌を効果的に生着させ、症状改善につながっていると考えています。本来は腸の上皮細胞には容易に細菌を寄せ付けない制御システムがあるため細菌を腸の中に入れただけでは生着しないのですが、そのメカニズムの詳細に関してはまだわからない部分が多く、これからの研究課題です。

今後も症例を重ね、より安全で効果のある腸内フローラ移植の方法を探求していきたいと考えています。

そのほかの疾患に関してはまた改めてご報告しますね。

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