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腸内フローラ移植とうつ

2018年8月16日

過敏性腸症候群(IBS)や機能性下痢(FDr)、機能性便秘(FDc)の症例に対して慶應大学で行われた腸内細菌叢移植(便移植、腸内フローラ移植、FMT)では、合併する精神症状(うつや不安症状など)が改善したとの報告がありました。
J Affect Disord. 2018 Aug 1;235:506-512. doi: 10.1016/j.jad.2018.04.038. Epub 2018 Apr 12.

精神症状の改善と消化器症状の関連は必ずしもはっきりしないものの、いずれの症例でも腸内細菌の多様性(diversity)の増加が認められました。

腸内細菌のメタゲノム解析技術が進歩し、腸内細菌に関する研究が飛躍的に向上し、近年では消化器専門医や細菌学者だけでなく、小児科医や産婦人科医、精神科医も腸内細菌についての研究をすることが多くなりました。

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(SJ Functional Medicineより)

以前より腸と脳が密接に関連があることは示唆されて来ましたが、今回の研究によりこの関係には腸内細菌が大きく関わっていることがより明らかになって来ました。

腸内細菌が神経伝達物質やその前駆物質を直接産生したり(短鎖脂肪酸、GABA、5-HTなど)、あるいは腸上皮の内分泌細胞に働きかけて5-HT(セロトニンの前駆物質)を産生させたりと、脳機能と腸内細菌は密接に情報のやり取りをしています。(腸内細菌⇨脳)

あるいはストレス等で交感神経優位な状態が続くと、交感神経末端から分泌されるアドレナリンがある種の腸内細菌に直接作用し腸内細菌叢のバランスを変化させることも確認されています。(脳⇨腸内細菌)

中でも「うつ」との関連が示唆されているセロトニンの産生は、その多くが腸で行われるため、腸内環境を整えることが近い将来うつの治療の選択肢の一つとなると考えられています。

うつの治療法としての「腸内フローラ移植」
うつや不安症を抱える方の多くは消化器症状を伴うことが少なくありません。これには腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)が関連していると考えられており、このdysbiosisを改善することができれば、精神症状の改善や消化器症状の改善が期待できます。

実際にこれまでに腸内フローラ移植臨床研究会ではうつの方達にUB-FMT(当研究会で開発された特殊菌液を用いた腸内フローラ移植)を行い、64%以上の有効率(2016〜2018年 9/14例)がありました。

ごく一例ですが、30代女性のうつの方に行ったUB-FMTの前後での心理テスト(POMS2)の結果をお示ししておきます。(POMS2 : Profile of Mood Status 2)

長年うつの症状で自宅に引きこもりがちの方でした。

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AH:怒り、敵対心
CB:混乱、当惑
DD:抑うつ、落ち込み
FI:疲労、無気力
TA:緊張、不安
VA:活気、活力
F:友好

(解説:ネガティブな感情が強い場合はVA,F項目以外は高くなります。逆にポジティブな感情が強くなればVA,F項目が高くなります)

この症例では移植の前後でネガティブな感情が低くなり、ポジティブな感情が高くなっています。

この例では精神症状に対してUB-FMTの短期での効果が確認され、さらに便秘傾向であった消化器症状の改善も伴いました。今後さらに長期での効果があるかどうか経過を追う必要があります。

まだまだ腸内フローラ移植は黎明期ですが、この例のように今後うつや不安症などの精神疾患などにも治療の選択肢として認識されるようになるのではと期待しています。

ご関心のある方は一度ご相談ください。

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