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脳の機能と腸内細菌

2018年11月18日

トキソプラズマ感染症をご存知でしょうか?トキソプラズマは主に哺乳類や鳥類に感染する原虫ですが、猫を終宿主とし、人の妊婦が感染すると子供に精神遅滞などの障害を引き起こす原因となります。

このトキソプラズマがマウスに感染した場合、マウスの行動に変化を起こさせ猫に捕食されやすくなることが知られています。(詳しくは「寄生虫なき病」を参照ください)

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つまり、マウスに感染したトキソプラズマがマウスの脳を「マインドコントロール」し、動作を鈍らせ、猫から捕食されやすくなり、最終的に終宿主である猫に感染を起こすこととなり、トキソプラズマにとっては最終目的地に到達できるとうわけです。

また、ショウジョウバエを2群に分けて違う餌を与えると、同じ餌を食べた雌雄同士が交配しますが、抗生物質で腸内細菌を処理すると相手の選り好みがなくなるという研究があり、宿主内に生息する細菌により行動が規制されていることが推察されます。

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このように私たちの意思や行動に、微生物、特に腸内細菌が大きな影響を与えているということが近年の研究で明らかになってきました。

私たちが感じたストレスは、様々な経路や物質を介して腸内細菌に伝わります。交感神経の末端から放出される神経伝達物質であるノルエピネフリンやドーパミンなどカテコラミン(CA)と呼ばれる物質は、大腸菌に与えるとその病原性が増すことが知られています。

また、中枢神経に存在するミクログリアと呼ばれる神経膠細胞の一種は、神経組織の障害が起こった時の修復や維持に重要な役割を果たします。無菌マウスのミクログリアは非常に未熟ですが、腸内細菌を移植することでミクログリアの正常な発達が促されるといいます。つまり神経組織が成熟する上で重要な役割を担うミクログリアの成熟には腸内細菌の果たす役割が重要であるということです。

こう考えると、私たちの精神的な強さや回復力(レジリエンス)を規定する重要な要素の一つとして腸内細菌が注目されています。

「レジリエンス」とは「ストレス耐性」と同義語ですが、「病気を跳ね返し、克服する力」といってもいいかもしれません。

このレジリエンスを獲得するには発達期の環境要因が大きく関わっていますが、主に次のようなものが知られています。

  1. 豊富な環境:マウスを複数の仲間で、おもちゃや隠れ家を含む環境で飼育すると、単独で飼育したものより不安行動が少なく学習能力が改善します。

  2. 母性行動:母親マウスから多く舐めたり毛繕いされたり(母性行動)した個体では、成長後のストレス耐性が高くなります。

  3. ストレス免疫:発達期にコントロール可能な範囲のストレスに繰り返し暴露された個体は、暴露されていない群よりもストレス耐性が高くなります。

このように乳児期に五感に適当な刺激を与えることが、レジリエンスに関係する神経系の発達に大きな影響を与えていることがわかります。これらの五感の重要性に加えて、最近では第六感とも呼ぶべき「内臓感覚」が注目されています。
 
内臓感覚は生後の身体情報として「前頭前野」に記憶されます。そして意思決定や判断するときに重要な役割を果たします。つまり、本来「外的なストレス」と考えられていた腸内の常在菌からのシグナルにより、脳の特定の部位が刺激を受け、成長後のレジリエンスに関与しているというものです。
 
我々が「直感」と呼ぶ感覚も腸内細菌と適切な関係性があるからこそ生まれてくる感覚なのかもしれません。この直感のことを「虫の知らせ」と昔の人が読んだのも大変興味深く思います。腸内細菌はこの内臓感覚の生成や発達、そして直感を研ぎ澄ますプロセスにも大きな影響を与えていると考えられています。つまりコントロール可能な範囲のストレスはレジリエンス獲得やよりしなやかに人生を送るには必須ということのようです。

このように幼少時の細菌との関係性はその後の発達に重要な役割を果たします。しかしたとえ、幼少時に細菌との適切な関係が築けなかったとしても、最新の科学はそれを克服するべく日々情報がアップデートされ続けています。(幼少時のストレスが脳と腸内フローラに与える影響)

色々なアプローチの有用性が明らかになり本当に面白い時代になって来たと思います。

当院、JR芦屋駅から徒歩4分のルークス芦屋クリニック(内科・消化器内科・心療内科)では腸内環境に注目し、腸へのアプローチ、脳へのアプローチを通して健康を取り戻せるようサポートしています。

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