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腸と脳、そして腸内細菌

2018年11月 7日

先週末は年一回のDDW(Digestive Disease Week)と呼ばれる消化器関連の学会が一堂に会する大きな学会でした。

今年は神戸での開催とあってアクセスもよく3日、4日の二日間も参加することができました。

この学会参加の最大の目的は消化器病専門医の更新のためポイント獲得ではありますが、もちろん最新の医学情報の収集のほか、普段なかなか足を運べない医学関連図書を扱う書店が出店しているため、ここで色々な書籍を手に取ってみることも楽しみの一つです。

そこでこんなの見つけました。

「腸と脳」

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著者はUCLAの教授で胃腸病学者(Gastroenterologist)です。

その中の一節を抜粋します。

「〜(中略)〜幼少時の体験が、腸と腸内微生物と脳の関係を不健康な方向にプログラミングしたなどとは彼女は思いもよらなかった。だが、最新の科学の目覚ましい進展を考慮すれば、この知見を医療に取り入れるべき時はとうにきている。」
〜以上「腸と脳」より抜粋〜

つまり、幼少時のトラウマ体験、不安定な家庭環境、健康への悪影響という三者間の結びつきは皆さんも直感的に理解しやすいとは思いますが、この結びつきを起こしている生物学的なメカニズムが近年解明され、幼少時のプログラミングに対する有害な影響を逆転させることができるようになってきたのはまだ最近のことなのです。

患者さんの多くは忌まわしい症状を「何とかして欲しい」「早くなおりたい」と思い来院されるのですが、上記のようなトラブルがあると、決して身体的なアプローチだけでは根本的に良くなるということがありません。たとえ薬やサプリメントで良くなったとしても上記のような問題を解決していかない限り、同じ症状がなんども繰り返し起こってくることになります。

これは消化器症状に限ったものではなく、全身の臓器と脳に刻み込まれたトラウマは深い関連性を持ちます。

ただ腸と脳は発生学的にもかなり密接なネットワークを持っており、さらに最近の腸内細菌に関する知見が深まり、腸内細菌と脳機能や情動、内臓感覚(gut feeling)、直感の発生には、腸内細菌の果たす役割も非常に大きいことがわかってきています。ですから消化器疾患と脳の感じるストレスの関連というのはイメージできやすいと思います。

腸内細菌の乱れ(dysbiosis)が起こり、この乱れが永続的に保たれる

具体的には幼少時に母仔分離を人為的に行ったマウスの実験では、腸内細菌の乱れ(dysbiosis)が起こり、この乱れが永続的に保たれることが明らかになりました。

腸内細菌の乱れは消化器疾患だけでなく全身の疾患との関連がありますから、幼少時の特に母子間の愛着形成(アタッチメント)は、情緒的な人間形成だけでなく、健康の側面からも多大な影響を及ぼしていることが示唆されています。
それでは不幸にも幼少時にあまり幸せではない時間を過ごしてきたという方は、発症してしまった病気を克服できないのでしょうか?

もちろん幼少時に充実した豊かな人間関係が築けることに越したことはありませんが、たとえそれが築けなかったとしても、ご自身の内面と向き合い、それを乗り越えていくことは可能です。
まずはご自身のうちにあるトラウマに気づくことが大切ですが、たとえば心理カウンセリングの中でトラウマを扱ったり、トラウマによる痛みを軽減させるような心理療法(EMDRなど)が効果的な場合があります。

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さらに腸脳相関の観点から考えると、精神的な安定を目的として、「腸」にアプローチするということも有効な場合があります。

たとえば、プロバイオティクスや食物繊維の摂取を意識することで便通異常が改善すると精神的に不安定だった人が見違えるようにストレスに強くなったり、抗不安薬が減量できたりということがあります。

また特殊な治療法になりますが、腸内細菌の乱れが深刻な場合には「腸内フローラ移植」も選択肢の一つになります。実際重度の鬱で長年引き篭りがちだった方が、健康なドナーからの腸内フローラを移植することで、症状の改善や薬の減量をすることが可能だった例を当院でも経験し、改めて腸と脳の密接な関連を認識することになりました。

心と体は密接に連動しています。特に心(脳)と腸は太いパイプで繋がっており、切り離して考える方がナンセンスだという時代になりつつあります。
こんなことも考慮すると、やはり腸内環境改善にはRelease(解放)というキーワードがとても重要だと思うのです。
あなたの症状が訴えているメッセージ、特にはらわたからのメッセージ(Gut feeling : 内臓感覚、直感)に耳を傾けてみませんか?

私たちはそんなお手伝いができればと考えています。

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