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IBS/SIBOに対する新規腸内フローラ移植
2024年7月 8日
今回の自閉スペクトラム症(ASD)の臨床研究では、ASDの中核症状だけでなく、周辺症状(胃腸障害、うつ・不安症状)に対しても新規FMT(腸内フローラ移植: NanoGAS®︎-FMT)が有効であることがわかりました。
これまでの様々な報告からASDには胃腸障害が合併することが多いとされていますが、その病態は過敏性腸症候群(IBS)に類似のものと考えられています。
IBSには腸蠕動運動を司る自律神経系の不調や、内臓感覚過敏、腸内細菌叢のバランス異常(ディスバイオーシス)を認めることが多く、下痢や便秘、膨満感、ガスの増加などの症状を伴います。
これまでにも研究会では多くのIBS(SIBOを含む)の方に新規FMTを施行し、症状の改善を認めたケースを経験してきましたが、今回の臨床研究において、胃腸障害に対しても一定の効果が確認されたことは、今後のIBS/SIBOの治療における明るい材料となります。近代文明はその便利さや快適さと引き換えに私たちと共存している微生物の多様性を激減させてきました。IBS/SIBOで長年お腹の不調を抱えていらっしゃる方の中には標準治療ではなかなか良くならず思い悩む方が多く、やはり微生物の多様性の低下を背景とする腸カンジダ症や腸のディスバイオーシスを伴うケースが少なくありません。
一般的な「腸活」や標準治療でもなかなか良くならない場合には、この新規FMT(NanoGAS®︎-FMT)が治療の選択肢となりえますし、予防医療の観点からは、腸内フローラの多様性を獲得することは将来の疾病リスクを減らす可能性を持ち合わせた治療となるでしょう。
本来は、腸内細菌と深い関係のある口腔内や鼻腔内細菌、土壌菌との連続性が微生物の多様性を維持するために重要であり、これらの多様な微生物が私たちの命や暮らしを支えてくれています。しかしこの連続性や循環が断絶してしまった現代社会において、腸内フローラ移植は私たちがより健全な微生物との共生、再接続を十分果たせるようになるまでの過渡期的な治療としての位置付けではありましょうが、より健全な微生物との共生生活を取り戻すための一助になればと切に願います。
Dr.城谷昌彦
20年以上消化器内科医として臨床をやってきたことで、非常に多くの患者さんから学びと気づきを得る事ができました。 その経験に加えて、何より自分自身が大病を患った経験を通して、一人の患者として「自分が受けたい医療」という視点を大切にしたいと考えて、日々の気づきをつらつらと芦屋から配信していきます。
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